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【六義園自然観察……11】
極私的・夏休み親子六義園自然観察教室……4[鯉と亀と人]
●●●今日の寄り道→
【丸山福山町】


六義園内を歩いているとかなり古そうな敷石の小径があり、それが分岐してその先が行き止まりになっている場所がある。
かつての庭園の設計上では先に行けたのかしら、いや行けそうに見えて行けないことに味わいのある趣向なのかなと思い、行けるところまで歩いて行ったりするのだが、園内見回りのおじさんに見つかると
「お客さん、そこは立ち入り禁止ですよ」
と怒られる。行き止まりの道には道があっても入るなということらしい。だったら立ち入り禁止と書いておけと言い返したくなるけれど、あまり立ち入り禁止の札が林立するのも無粋なので、注意されたら黙って引き返す、それでよいと思う。
怒られるといえば、昔、ポテトチップスや揚げ煎餅などの油脂分を含んだお菓子を池の鯉や亀に与えると水質汚濁の原因になるのでやめて欲しいと書かれた貼り紙を見た気がするのだが、最近はお菓子を池に放り投げている人を多く見かけるが、見回りのおじさんに怒られている姿を見たことがない。
母はどうしても生きものを見ると餌やりがしたいらしく、餌をやっても良いのかと聞くので、売店をのぞいたら「麩」と「鯉の餌」が売られていた。売店で売られている「麩」と「鯉の餌」なら怒られて嫌な思いをすることもあるまいと思い、母に買ってやったら嬉しそうにしている。

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母の愛犬イビは失明してから益々食い意地が張って、食べ物なら何でも来いなのだが、鳩や雀のみならず、鯉や亀まで、なかなか食べ物の好みがはっきりしていて面白い。
全く味付けしていない乾燥木の実の瓶詰めが自然食品系の店で売られていて、僕はそういうものをボソボソとつまみながら焼酎を飲んだりするのが好きなのだが、湿気てしまって食べなくなったものがひと瓶自宅にあり、母が捨てるのはもったいないというので、散歩のとき餌やりがしたいなら鳩や雀にやればよいと言っておいた。
そうしたら母が面白いと感心しているのだが、ほとんどどんな木の実でも丸飲みにする鳩が、赤い枸杞(くこ)の実だけは口にくわえてみるものの吐きだしてしまい、決して食べないのだという。人間は枸杞の実を枸杞子と呼び生薬として愛好し、強壮効果があるとありがたがるのだけれど、鳩は枸杞子が嫌いらしいという。
六義園の鯉や亀も口がおごっているようで、麩をまくと「なんだ麩か……」と言うように緩慢に食べるのだけれど、茶色の鯉の餌をまくと熱狂し、弱い者を押しのけ、水しぶきを上げて非常に浅ましい奪い合いとなる。
そもそも六義園内の鯉と亀は餌を貰い慣れていて、人が石橋の上に差し掛かったり、水際に立っただけで寄ってきて、巨大な鯉は丸い口をあ〜んと開けて水面に顔を並べるし、亀は折り重なって他者を押しのけつつ頂上に立とうとし、踏み台にされた者は水中で手足をバタバタさせ苦しげにもがいているという、非常に躾の悪い浅ましい光景になる。
人がそれを「あはは」と笑いながら餌やりをするということは、浅ましい光景づくりに一役買っているわけであり、「最近は何をやっても虚しい……」などと自嘲気味の母が、
「お前たちも何が楽しくて生きてるんだろうねぇ……」
などと話しかけながらぼんやりと餌やりをする姿というのは、鯉や亀と一体になった非常に趣のある正しい餌やりの姿に見えたりし、妙に馬鹿馬鹿しくも哀しい。
そういう光景を脇から眺めているのもまた広義の六義園自然観察である。
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【今日の教訓】生きものに遊びで餌をやるというのは、老人と病人だけに許されることのような気がする。

写真大上:人が頭上の石橋に立っただけでパニックになる通称ミドリガメ。
写真大下:餌をやると阿鼻叫喚。
写真小:売店で売られている「麩」と「鯉の餌」。
[Data:SONY Cyber-shot
W1]
観察日:2004年7月17日
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