モツやろたい

私はモツの煮込みが好きだ。

白モツのしっかりした
歯ごたえが好きだ。

モツを食べると母親を
思い出す。

別に母親がモツだったわけではない、と思う。

 

小学生の頃のことだったと思うが、テレビで野球中継を見ていたときのことだ。外国人のピッチャーだったのだが、アップになった彼が口を

ニチャ、ニチャ、
ニチャ、ニチャ

と動かしていた。欠食児童だった私には、それはいかにもうまそうなニチャ、ニチャだった。

あのピッチャーは何を食べているのだろう?……

 

野球をしながら何を食っているんだろう?

なんてヤツだ!

だらだらご飯を食べる私はよく父に叱られた。

 

私はいやしかったから(いまでも充分にいやしい)くやしかった。テレビの彼は、その回が終わって次の回になっても

まだ食い続けている。

彼の口に私の気持ちは集中した。

「あんなに長続きする食べ物が私もほしい!」

 

私は、そばにいた母親に訊ねた。

「母ちゃん、あの外人、なんば食うとっと?」

 

「モツやろたい」

母親はあっさり答えた。

さすが、母ちゃん。

私は、翌朝必死になってモツを買ってきてと母におねだりした。そして、2、3日後、私はモツのみそ煮込みを初めて口にした。甘い肉汁と歯ごたえがいつまでも口の中に残った。

これだ、これだったんだ!……

それからモツとの長いつきあいが始まった。ほんとうに長いなあ〜

その頃、噛みたばこのことなんて思いもしないカワイイ年齢だった。