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【回文講座】
Part入門編

 

 

掻いたいんきん痛いか
(かいたいんきんいたいか)


1.回文とは何ぞや?
回文とは上(文頭)から読んでも、下(文末)から読んでも、同じになる文のことである。
たとえば、
「竹ヤブ焼けた」→「たけやぶやけた」
「旦那がなんだ」→「だんながなんだ」
「タバコの小旗」→「たばこのこばた」
などの文のこと。
なお「新聞紙」(しんぶんし)「キツツキ」などの単語・熟語は上から読んでも下から読んでも同じ言葉 であるが、これらは正確には回文ではなく回句・回語と言うべきである。
(注)錯誤:海苔で有名な「山本山」の「上から読んでも下から読んでも山本山」というCMがあるが、これは回文ではない。「やまもとやま」の回文読みは「まやともまや」であり、同じ言葉という回文の条件を満たしていない。あえて言えばこれは回字(字の表記が上下同じ)である。

2.回文の作法 
回文にはいくつかの決まり・ルールがあるので、それを簡単に紹介する。 ただし、こうしたルールには当然ながら例外があるので(むしろ例外ばかり,といったほうが正しい),その都度個別に判断すべきものなり。
同音の発音である「は」と「わ」、「え」と「へ」、「お」と「を」は同じ語として扱う。
例:「わたしは(私は)」→「はしたわ」のほか「はしたは」「わしたわ」「わしたは」もOK。   
「わたしへ(私へ)」→「へしたわ」のほか「えしたわ」もOK。  「わたしを(私を)」→「をしたわ」のほか「おしたわ」「おしたは」もOK。
濁音・半濁音はそのまま一語として回文読みに加え,清音扱いは不可。  
濁音(「がぎぐげご」など)例:「ぐうぐう」→「うぐうぐ」はOKだが、「うくうく」は不可。
半濁音(「ぱぴぷぺぽ」など)例:「ぱくぱく」→「くぱくぱ」はOKだが,「くはくは」は不可。
促音・拗音もそのまま一語として回文読みに加えるが、清音扱いはOK。  
促音(「っ」など)例:「かって」→「てっか」のほか,清音扱いで「てつか」と読むのはOKだが,「てか」と促音を省略するのは不可。
拗音(「ゃ」「ゅ」「ょ」など)例:「しょうがない」→「いながうよし」と清音扱いはOKだが,「いながうし」と拗音を省略するのは不可。。
外来語を表記する時の「ァ」「ィ」「ゥ」「ェ」「ォ」もそのまま一語として回文読みに加えるが、清音扱いはOK。
例:「フォント」→「トンオフ」はOKだが、「トンフ」と省略するのは不可。
句読点,長音符号(「−」)やハイフン,かぎカッコなどの符号や記号は省略してもOK。  
例:「コーヒー」→「ーヒーコ」「ヒーコ」「ヒコ」はOKだが,「コォヒィ」「コオヒイ」と音読みで拗音扱いするのは不可。
とりあえずはこんなところか。 ルールの要点は,ひらかな48文字(当然「ん」も含む)の表記を重視していること(符号・記号などは省略自由),さかさまに表記して上下同じ文になることであると心得るべし。

3.回文の表記法

回文の表記は,漢字・かな混じり文には,必ず「ルビ」を振るのが正しく、また親切な表記法である。というのは,なんとか回文となるように,とくに漢字の読み方でさまざまな工夫や苦心がなされており,読み方がポイントとなるからである。なかにはかなりの無理・無法・荒業を強行・駆使している例も多いが,その創作過程の悪戦苦闘ぶりを鑑賞するのもまたなかなかの楽しみなのである。
例:回文の師と勝手に仰ぐ土屋某氏の作にして、わが座右の銘。

大胆になるな怒鳴るな忍耐だ

(だいたんになるなどなるなにんたいだ)


4.回文の実例

今回は入門編なので,まず初めて回文に挑戦した身のほど知らずの愛すべき大兄・女史らの実作を紹介して,「あつ,これならおれにもできる!」「わたしだって」という気分を味わっていただきたい。いずれもなかなかの迷作・ケツ作である。なお蛇足ながら、下記の例はほとんどが回文ならぬ回句・回語の悪しき例であることをお断わりしておく。 回文の評価としては「毒」「臭」のレベルであるが、とりあえずはこのようなレベルから始まるのが普通なので、これから挑戦しようという初心者は多いに励まされるであろう。


千葉に住む友人A氏作:
 
「千葉の竹やぶ焼けたの罰」
(ちばのたけやぶやけたのばち)  
古典的な回文「竹やぶ焼けた」の変形だが,目の付け所がよく,「楽して得する」典型例。

石原某作:  
「たぶん豚」
(たぶんぶた)  
(ドアの陰から豚らしき尻と尾が見えるイラスト付き)  
「こねる猫」
(こねるねこ)  
(猫がなにかをこねて!いるらしきイラスト付き。猫がいったい何を,なぜ,「こね」たりするのか?)
(いずれも筆描きのイラスト付きなのがミソだが、あまりにもアホらしくておかしいので、かえって得をして いる,というウケねらいの奇作)

川上 京作:
「眞佐子様」
(まさこさま)
(これは友人のデザイナー,三上眞佐子さんのことであったが、後には皇太子妃雅子さまのことに格上げされたという。結果的にまぐれの快心作)  
「筒井五つ」
(つついいつつ)
(筒井書房社長・筒井眞六氏の年齢か? 分身の数か? あるいは女・子どもの数か? 意味不可解なミ ステリー怪作)

他称「エセグラファー」(エッセイを書くフォトグラファー)
川上哲也作:
 
「戒め姉妹」
(いましめしまい)
(「こまどり姉妹」からの連想か? この意味不明の句が大書された自作の写真入りハガキが届いたときは, なんのことやら?と首をひねった。どうも怪文ならぬ回文らしいと気づいて,ほっとしたぜい)
この回句に対しては下記のような添削をして送り返してみた。
「哲也いま示し舞いやって」
(てつやいましめしまいやって)
ところが,「戒め姉妹!、これがいいんだ」と,ものすごく不評だった。 回文には作者のこだわりや思い入れがたっぷりと入っていることを思い知らされて,以後、小生は添削は姉妹,じゃなかった,仕舞い,終い,しまい,と心に決めたのだった。

(つづく)

 

 

 

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