鮎料理には刺し身(洗い,背越し),姿寿司,塩焼き,田楽,煮物(子持ち鮎の甘露煮),天ぷら・フライ,炊き込みご飯……などなど,数々あり,それらを一通り食べられる「鮎尽くし」料理を売り物にする料理屋も多い。しかし「何といっても,鮎は塩焼きに限る」「次いで鮎の炊き込みご飯」というのが,釣り人に共通の意見です。
そこで,ここでは塩焼きと鮎ご飯の料理のコツと注意をまとめました。ご参考にしていただければ幸いです。
1 保存法
鮎は釣った後,生きているうちに氷水で締めて持ち帰り,糞を押し出して水洗いし,よく水気を切り,さらにペーパータオルなどで水分を拭いてから,必ず1尾ずつラップにくるんで冷凍します。
1尾ずつラップでくるむのは,そうしないと何匹もまとまったまま固まってしまい,解凍するときに1尾ずつはがすことができなくなり,処理に困るからですが,そのほかにも,冷凍で少しずつ乾燥が進むのを防ぐためです。冷凍庫は乾燥庫でもあるので,本来は氷水を張ったアルミ製のタッパに入れて,タッパごと冷凍するのがベストです。
こうすれば,氷の中の鮎は乾燥を防げるので,半年後の正月に天然の鮎を賞味するという釣り人ならではの至福を味わうことができます。
2 鮎の塩焼き
焼き魚料理の基本は「遠火の直火」です。つまり火や炎で焼くのではなく,遠赤外線で「あぶり焼き」するのです。だから本来は,炭火・七輪・石綿入りの網などでじっくりと時間をかけて焼くのが理想です(この場合も,炭火は赤くおこっている状態で焼くのではなく,炭の表面が白く灰で覆われてから焼くのが基本です)。しかし,ガスでも魚焼きに適したグリルなどで注意深く焼けば,十分うまく焼けます。その極意は下記のとおり。(ただし,グリルはガスの火が上から下へ出るタイプであること。ガスの火が下から上へ出るタイプは,ガスに含まれる水分が魚の味を台無しにする)。
火加減は必ず中火以下で(冷凍物なので強火は禁物。特に焼き始めは,表面だけが焦げやすくなるので,弱火にして,十分注意する),
何度も裏返しながら(裏表に満遍なく火が通るように4〜5回は裏返す),
時間をかけて(少なくとも30分以上はかかる),皮の色がキツネ色から部分的にやや焦げ茶色に変わり,
皮の表面がこんがり,ぱりぱりとして,皮全体に細く小さなひきつれ(縮れ)ができると,焼き上がり。ちょっと焼きすぎて焦げたかな……?と思われるくらいでOK。
焼いている間はグリルの前から決して離れないこと(離れてほかの事をしていると,うっかりして焦がしてしまう。これは何度も失敗して身にしみた苦い教訓なり)。
解凍してから焼くよりは,冷凍のまま焼くほうが新鮮さと風味が保たれます。
解凍してから焼く場合は,頭・背ひれ・胸ひれ・腹ひれ・尾ひれに粗塩をたっぷりとなすりつけて,それらの部分が焼け焦げないようにすると,焼き上がりが美しい。
これは「化粧塩」といい,料亭などでの焼き魚料理のテクニックですが,なかなか効果的です。鮮魚や解凍魚にはぜひお試しあれ。冷凍のまま焼く場合でもできなくはないが,粗塩をなすりつけにくいし,鮮魚とは焼き方(焼き加減と時間)が違うので,焼く途中で頭・背ひれ・尾びれが焦げ落ちてしまいやすく,化粧塩の効果が出にくい。
以上の手順を遵守すれば,炭火並みの焼き上がりが期待できます。
3 鮎ご飯
鮎ご飯の出来の善し悪しは,米の炊き方と水加減に大きく左右されます。
まず鮎を冷凍のまま軽く焼く(塩焼きほどこんがりと焼かないほうが,鮎独特の香りが残ってよい)。鮎と米の比率は,米1合あたり少なくとも2尾は入れたい。鮎はケチらず,多いほうがうれし
いし,おいしい。
研いだ米と一緒に「出し汁」のなかに入れて炊く。米は粘り気の少ないタイプのほうがお勧めです(コシヒカリなどの高級米は粘り気が強すぎ,
炊き込みご飯には向かないように思う)。
また研いだ米は30分ほど出し汁に浸け置きしてから炊くほうがよい。これは普通に米を炊くときも同じですね。水分を十分に含むからです。
出し汁は「コンブ+水」が基本で,それに「塩少々+酒少々+しょう油少々」のほか,好みの味付け(ただし,鮎の味と香りを損なわないようにやや薄味にする)。
鮎以外のほかの具はあまり入れないのが基本ですが,小生らはゴボウ(ささがき)とニンジン(千切り)くらいは水分が出ないので,彩りに入れます。
気をつけたいのが水加減です。これは日頃の飯の好みにもよりますが,べっちゃりした飯よりも,米の粒立ちがよい,ややパラツキ気味の飯のほうが向いています。
小生らはいつもかなりパラツキ気味の飯が好みなので,鮎ご飯でもいつもの水加減で,特に水を少なくすることはありません。軽く焼いた鮎から水分が出ることはほとんどないので,まあ普通の飯よりやや少なめ程度の水加減でいいでしょう。
ただし,水が少なすぎると「カンチめし」(大阪風の言い方)になるので,水加減は悩ましい。何度も炊いて,お気に入りの炊き具合 を会得するしかないね。
炊きあがったら,飯のなかに半ば埋まっている鮎を(アッチッチ!と)取り出し,頭や骨・背ヒレ・尾ヒレなどを抜いて(まだアチチッ…),好みの大きさに切り,釜に戻して,飯とよく混ぜ合わせてから,蒸らすこと。
骨は抜いたほうがいいけど,頭やヒレは切り刻んで混ぜてもよい。鮎の内臓(はらわた)もいっしょに混ぜるのがお勧めですが,「内臓はいや」という場合でも,はらわたの中にある肝(1〜2cm大で,肝臓の形をしている)だけはぜひとも選り出して,混ぜるべきです。この肝こそが鮎の味覚の粋で,野性的かつ上品な苦味のなかになんともいえない甘味が漂う独特の味わいです。肝だけは切り刻まず丸ごとのまま混ぜて,ご飯のなかから幸運にも肝にあたった時の独占的な楽しみとしておきたい。
鮎ご飯に薬味は基本的に不要です。特にネギ・ショウガ・ミョウガあるいはノリなど,匂いや味の強い薬味は不可。使うなら紅ショウガ(千切り・みじん切り)をごく少量,ご飯にパラパラとふりかけると,味が締まるので,許せる。
ご飯に合わせる汁は「味噌汁」より「吸い物」(おすまし)がお勧め。それも,出し汁は「コンブ+カツオ」で,具はトーフ・ワカメくらいの薄味こそふさわしい。
かようにして,鮎ご飯はひたすら天然鮎の香りと独特の味を賞味するために細心の心遣いをすることが肝要で,微かなスイカの香りと,独特の肉味,肝の苦味など,繊細かつ洗練された風味を味わうべし。釣師の心得,いとおかし。
「ひげ面が大口あけて鮎食らう」
(はまボーズ)作
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